【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
「沙耶、行こう」
「ユウ、待ってよ。久しぶりの再会がその態度?」
彼女の手が優悟君の腕へと回されるのを見て、私は呆然としてしまう。
今までも彼を狙う女子社員とかを見てきたが、ここまであからさまな態度を取られたことはなかった。
「特に感動するような再会じゃないだろ?」
その棘のある言い方に、マリカさんはハッとした表情をした後、すがるように優悟君に近づく。
「だから、あれは違うのよ」
「そんなことはどうでもいい」
冷たく言い放った優悟君は、マリカさんの手を振り切ると、私の手を握りしめた。
「ちょっと…優悟くん! 待って!」
強引に私の手を引く彼に、ただでさえモヤモヤしていた私は手を振り払う。
そんな私にハッとしたように動きを止めて、優悟くんは大きく息を吐いた。
「悪い……」
絞り出すように発したその声の意味が分からなくて、私もなぜか気持ちが落ち込んでいくのが分かった。
「どうしたの、急に」
静かに問えば、優悟くんはそのまま部屋へと入り、ぎゅっと私を抱きしめる。
「二人きりだと思ったのに邪魔が入った」
それだけだとは思えず、私が黙り込んでいれば、優悟くんは何も言わずキスをしようと私の顎をすくい上げる。
「やめて」
なぜか先ほどのマリカさんの挑むような表情が頭をよぎり、彼のキスを避けてしまった。
そして、優悟くんもそのことを誤魔化しているような気がしてしまったのだ。
「沙耶…」
「少し頭を冷やしてくる」
驚いたように目を見開いた彼に、冷静に話せる気がせず、それだけを伝えて部屋を出た。