【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら


「優悟とは仕事がらみって話はしたよな」
私の問いの返事ではないそのセリフに、私は「え?」と声を上げていた。

「俺の親父はこのホテルグループの経営をしていたが、まあ、優悟の会社と合併した。そう言えば聞こえがいいが、買収だな。親父が手を広げすぎて経営が立ち行かなくなっていたから」
アランさんは小さくため息をつきながら苦笑する。
淡々と話す彼の話を要約すると、もともと世界中にあるこのホテルは本社がアメリカにあり、買収の話の時、違う会社では働いていたが、アメリカにいた優悟くんもその場に立ち会ったそうだ。

「別に、恨みがあるとかそんなんじゃないからな。買収されても仕方がなかったし、社員もそのまま雇用してくれている。俺だって責任者として会社の経営権ももらっているから」
その言葉には嘘はなさそうで、私はアランさんの話を聞いていた。

「会社の件は別だ」
じゃあどうして優悟くんと私に嫌がらせを? そう思っていた私の聞きたいことなどお見通しだろう。

アランさんはじっと私を見つめた。

「そのころの優悟はやけに冷めていて、恋愛だの結婚だの言うような感じじゃなかったのに……」
そこで彼は言葉を止めた。
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