【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら


縋るように誤解を解こうとしたマリカさんの言葉。
あの二人の間にも、何かすれ違いがあったのだろうか。

あんな完璧な優悟くんが、誤解とはいえ私の浮気で別れたと思っていたのなら、付き合った女性ぐらいいて当たり前だと頭では理解できている。

しかし、もう一度彼の温もりを知ってしまった今、あの腕が私以外の誰かを抱きしめていたなど想像すらしたくない。

「聞きたくなんてありません」
もはやここにいても意味がないと、私が立ち上がれば急に手がギュッと握りしめられる。

「初めはマリカのために沙耶を誘惑しようとしていたけど、気が変わった。沙耶、可愛いな」
するりと腕を握っていた手を滑らせ、私の手に指を絡めようとするアランさんに、私は彼をにらみつけてその手を振り払う。

「どんなことがあっても、もう彼を信じるって決めたんです」
静かに真っ直ぐ彼を見下ろせば、驚いたような瞳とぶつかった。

「ますます気に入った……」
「アラン、そこまでだ」

初めて聞くかもしれない怒気の含んだその声が後ろから聞こえたと思ったと同時に、私は慣れたぬくもりに後ろから包まれた。
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