【2025.番外編＆全編再掲載】甘い罠に溺れたら

店を出てホッとしたのか、目の前が回り私は座り込んでしまった。

あーあ。
彼女がいるって聞いたぐらいでこんなに飲んで……。

「バカみたい……」

酔いを醒まさないとと思う物の、ふわふわとした頭でそこから動けず私は自嘲気味な笑みを漏らした。

「羽田さん！」
その言葉と一緒に目の前に現れたその人を私は見上げた。

「やっぱり……酔ってたよね」
小さくため息をついて水田先輩は私を見た。

「先輩……どうして？」
ぼんやりとしながら言った私の頭をポンと叩くと、

「その理由は今度ね。とりあえず帰ろう。タクシー拾ってくるから」

そう言いい残して行ってしまった先輩の優しさに私は泣きたくなった。

酔ってる今、理性は働かず、いつものポーカーフェイスもできず弱い自分が顔を出す。

こんな所を見せる訳には行かないと思っても、どうにでもできない感情に振り回される。