【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
10分程してついたのは、大学近くの洋食屋さんだ。
今思えばそんなに高価でもなんでもなかったが、バイトをしながらの学生時代はちょとした場所だった。
部長と付き合いだして、記念日や、何かのお祝い事のときによく来ていた店で、私の大好きな場所だった。
あの頃とかわらない店の隣の駐車場に車が止まると、私はゆっくりと外に出た。
昔は砂利だった駐車場が、今はきちんと舗装されアスファルトになっていた。
「よくお前、ここの砂利にヒールを挟んで転びそうになっていたよな」
私もちょうどその事を思っていて、部長も同じように思い出したことがなぜか嬉しかった。
「もう転びませんね」
私の言葉に、部長も懐かしそうに店に目を向けた。
仕事なのに、どうしてこの店を選んだの?
そんな疑問が沸き上がるが、私はその言葉を言ってしまうと、なぜかこの雰囲気が壊れてしまいそうで、そっと心の奥にしまった。