主任、それは ハンソク です!

 久住先輩の驚いた声で、我に返る。

「な、なんでもないですから」

 私は慌てて取り繕ったけれど、久住先輩はふーんと意味深に笑うだけだった。

               *   *   *

「今さっき、カジタツから連絡があった。今度、清州グループ『ル・マルシェ』の車内刷り広告用のコンペがあるから、ヨーコさんもエントリーするように、だそうだ」
「え?」

 出社早々、ものすごい早口で主任がそう言った。

「しゃ、しゃない、ずり……?」

 しばしの間の後。
 ああっ、と主任が大声で叫んで、私がビクンっと飛び上がる。もう、このやり取りは、販促ではすっかりお約束みたいになってしまった。

「あー、そうだよなぁ。ここには電車って無いんだよな」
「……は、はぁ」

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