主任、それは ハンソク です!
洋子という名前も、私たちの世代にしては確かに地味で古くさいけど、そんなに変な名前でもないはず。なのに、どうもみんなの印象に残れないのは、私自身に問題があるのだと思う。
学生の頃はそのことでかなり悩んでいたけれど、派遣社員の今となってはむしろ助かっている。なぜなら、契約期間が切れてしまえば、良くも悪くもきれいさっぱり忘れ去られるから。
「……主任、得野ですよ。と・く・のっ」
久住先輩が今度は主任に向かって低く囁く。しっかり聞こえてしまっているけれど、そこはそれ、大人の対応で聞こえないふりをする。
「あ、ああ。そうだっ、とくのっ、得野さんだ」
気遣わせてすみません、主任、と。またしてもうっかり頭を下げそうになったその時、主任が軽く咳払いした。
「で、このメモ用紙なんだが」
顔色が若干戻った飯塚さんが、身体をギクリと強張らせた。