エリート弁護士と婚前同居いたします

「……佐田、なんの真似だ？　なんで日高と茜が？」

不機嫌さが滲む低い声に肌がゾクリと粟立つ。
そうだ、私、朔くんを待たせていたのに……！　まずい、朔くんは私が日高さんに何か言われていると誤解している！

「さ、朔くんっ、違うの！　日高さんは謝りにわざわざ来てくれたの！ 佐田さんは日高さんに付き添ってくれていただけで何も朔くんが心配するようなことはないから！」
慌てて彼に向き直って言うと朔くんが私に胡乱な表情を向ける。

「本当に……？」
ブンブンッと音がなるくらいの勢いで頷く私。
「本当だって。こんな駅前の人目につく場所で喧嘩をうる人間はいないだろ。っていうか、なんでお前がここに？」
どこまでも冷静な佐田さんが朔くんに怪訝な目を向ける。

「俺は検診、その後で茜を待ってたんだよ」
再びグイッと私の右手を引いて自身の後ろに私を隠しつつ、彼が反論する。
「あー……それで俺が事務所に戻った時にお前いなかったんだ。依頼人のところだと思ってた」
佐田さんが陽気に応酬する。どうやら朔くんが私の勤務先に検診に通っていることは知っているらしい。

「そんなこと、どうでもいいだろ。茜に会いに来るなら来るって言えよ！」
不機嫌なままの朔くん。
「謝罪したいって日高が言ってもお前、絶対反対するだろ」
少しだけ真面目な口調で佐田さんが言う。