エリート弁護士と婚前同居いたします
「……本当にごめんなさい。朔くんは心配してくれてたんだよね。わかっていなくてごめんなさい」
真摯な思いを込めて頭を下げる。

「なかなか来ないから迎えに行こうと思って、カフェを出たら三人でいるのが見えたから。それはそれで驚いて心配したけど、茜が無事で良かった」
心底ホッとした声で朔くんが言う。
うう、本当に申し訳ない。

「……本当にごめんね。これからは気をつけるから! でもどうしても日高さんの話を聞きたかったの。真剣な思い詰めた表情をしていたし、ここまで来てくれたのだから」
そっと顔を上げて朔くんをじっと見つめる。日高さんはわざわざ謝りに来てくれた。それだけで私には充分だった。
それに、彼女は彼の同僚だ。今回のことで変にギスギスしてほしくはない。

「……わかってるよ。本当に茜は見た目と違ってお人好しだからなあ……」
なんとなく聞き捨てならない台詞を吐きながらも、朔くんが困ったように笑む。朔くんのものものしい雰囲気が薄れてきたのを感じる。
「ごめんなさい。たくさん心配かけて」
もう一度きちんと謝罪する。すると朔くんはニヤリと口角を上げた。
あれ、何か企んでる?

「うーん、どうしようかな? 俺、本当に心配したんだよね。しかも誰かさんはよく連絡忘れるから」
焦げ茶色の瞳がイタズラッ子のように輝く。腕を組みながら私の顔を覗きこむ。
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