エリート弁護士と婚前同居いたします
「毎朝、俺を大好きって言って。それが家賃」

「ええっ!!」
 瞠目して叫ぶ私。
 この人何を言い出すの? なんで毎日告白するの? 何を考えているの? 本当に意味がわからない!

「ちょっと待って、大好きってそれって……」
「ん? お前だって香月さんや侑哉に大好きって言うだろ? でも俺には全く言わないから」
 それは姉妹だし幼馴染だからの話で、知り合って間もないあなたにそんな気軽に言えるわけないでしょ! しかも違う意味でとられそうで恐い。

「む、無理!!」
「なんで? 親愛の気持を込めてくれたものでいいのに? まあ、本音を言えば本気の大好きを言ってほしいけど」
 妖艶に微笑みながら彼が私のほつれた髪を耳にそっとかける。骨ばった彼の指が頰を掠めて、耳が瞬時に熱をもつ。

「可愛い」

 彼の甘い声が耳に響く。
 もう本当に心臓に悪い! なんでそんな声を出すの。まだ半信半疑なのに、この人は本気で私のことが好きなんだって勘違いしそうになる。
「可愛くなんて、ない」
 叱られた子どもみたいにフイッと視線を外して言えば、彼のクスッと笑った声が頭上で聞こえた。

「可愛いよ。俺にとってお前は出会ってからずっと可愛い。お前は今日から俺を朔って呼ぶこと。わかった?」
 ポン、といつかのように私の頭をひと撫でして彼が言う。
「よ、呼び捨ては無理!」
 素っ気なく言うと、彼が苦笑する。

「じゃあ、お前の呼びやすい敬称をつけていいよ。ただし『さん』付けは禁止」
「どうして?」
 今まさに考えていたことを否定されて苦い顔をする私。
「薬品名みたいだから嫌だ」
 朔さん、ああ、酢酸ね……シャレみたいってことね。
 思いもしない返答に、思わず気が緩んで笑ってしまう。
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