皇帝陛下の花嫁公募
 冠はあまりに重いために戴冠式が終わった後は外した。アンドレアスも同様だ。

 マントも脱ぎ、花嫁衣装のままアンドレアスと並んで宴の席に着く。多くの招待客にたくさんの料理と酒が振る舞われ、賑やかで華やかな宴は長時間続いていく。

 本当は早く二人きりになりたいと思っていたが、そういうわけにはいかないのだ。顔を見合わせたり、笑みを交わし合ったり、時々軽い会話をするくらいが精一杯だった。

 でも、あと少し我慢したら……。

 リゼットは踊りを披露する外国の舞踏団に拍手を送りながら、隣のアンドレアスのことばかり考えていた。

 ある程度、酒が回ってしまうと、花嫁がその場にいようがいまいが、あまり関係ないようだ。アンドレアスに促され、リゼットは隅に控えているナディアに合図をして、共に退席した。

 宴が始まる前に、背の高い痩せた女官長から皇妃の部屋に案内してもらっていたから場所は判る。女官長はギスギスした印象の中年の女性で、リゼットは彼女にあまり好かれてないように思った。

 女官こそ味方につけなくてはいけないのだが、例の孤児院の子供達のことで文句を言ったのが原因なのだろうか。女官の間で悪口などが広まっているのかもしれない。

 田舎の国の王女様。宴の間も、上品そうな招待客から、そんな言葉が聞こえてきた。王女という身分は皇帝にふさわしくないとは思えないが、小さく貧しい国だとなんの後ろ盾もないわけだから、きっと悪口を言いやすいのだろう。

 わたし、これからちゃんと皇妃としてやっていけるかしら。
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