皇帝陛下の花嫁公募
 部屋は、居間と寝室と、それから衣装部屋や化粧部屋に分かれている。居間には長椅子と肘掛け椅子とテーブルがあり、隅には書き物机も置かれていた。寝室には大きな天蓋付きのベッドがある。

 ここが全部自分の部屋と聞かされて、最初は驚いた。自分は一人しかいないのに、どうしてそんなに広い場所が必要なのかと。

 だが、それが皇妃というものらしい。皇帝の妻であり、皇帝の跡継ぎを産む女性として、特別な扱いを受けるのだ。

 衣装部屋には誂えたばかりの新しいドレスがたくさん並んでいた。どれも美しく、リゼットの感覚からすると、どれも『よそ行き用』に見えた。いつもこれらのドレスを身に着けるのは肩が凝りそうだった。

 だが、以前、リゼットが着ていたような普段用のドレスをここで着たなら、恐らくあの意地悪な女官達に蔑みの目で見られそうな気がする。

 ナディアの手を借りて、花嫁衣装を脱ぎ、寝支度をする。純白の夜着は柔らかい生地でできていて、繊細なレースが飾りとしてついている。同じ色のガウンを羽織ると、贅沢な気分になってくる。

 髪は丁寧に梳かれ、香水を少しだけ振りかけられた。瑞々しい花の香りがした。

「では、ゆっくりお休みなさいませ」

 ナディアはお辞儀をして、部屋を出ていった。

 アンドレアスはわたしに会いに来てくれるかしら……。
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