皇帝陛下の花嫁公募
 応える声がないので、リゼットは扉を開いた。そこは粗末で簡素な部屋だった。半地下のせいか、ひんやりしていて肌寒く感じられる。狭い部屋のベッドに、エミールが一人で寝ていた。

 額の上に小さな手拭いが載せられていて、傍のテーブルには水差しと洗面器が置いてある。エミールが熱を出して寝込んでいるのはすぐに判った。時折、小さな咳をしている。

 傍に近づくと、エミールは目を開けたが、すぐに閉じてしまった。母親でないことにがっかりしたのだろう。リゼットは思わずその手を握った。

「エミール! しっかりして!」

 手がとても熱い。唇はひからびたようになっていて、一体いつから熱が出ているのだろうと思った。

 リゼットは手を離して護衛に命じた。

「この子を抱いて、わたしの部屋に連れていって。わたしのベッドに寝かせるのよ。ナディア、あなたはこの子のお母さんを探しだして、連れてきて。わたしは医者を呼ぶわ!」

「でも、リゼット様。お一人で行動しては……」

「非常事態よ。そんなこと言ってられないわ!」

「ああ、もう! 判りました!」
< 190 / 266 >

この作品をシェア

pagetop