皇帝陛下の花嫁公募
「庶民のために奔走するリゼット様を見るのが、テオは好きなんです」

「変わり者だものね、テオは」

「リゼット様に言われたくないと思います」

 そうかもしれない。とはいえ、テオもナディアも生まれは決して悪くない。もちろんアマーナリアの国の中の話だが、いい家柄の人間だからこそ、小さい頃から王女と共に育ってきたのだ。

「それで、あなたにもう一働きしてもらわなくてはならないんだけど」

「お部屋のことですね! 大丈夫です。ちょうどいい空き部屋がありますから、整えるよう指示してきます」

 ナディアはリゼットの考えていることがすぐ判るのだ。軽い足取りで部屋を出ていった。

 エミールは母親に手を握ってもらって、少し落ち着いてきたようだった。薬が効いてきたこともあるのだろう。目を閉じて、寝息を立て始めた。

 この宮殿で自分がなすべきことが判らないと思っていたが、本当はちゃんとあったのだ。エミールはそれに気づかせてくれた。

 とはいえ、下働きの者達の生活を見直すには、自分一人の力ではできない。リゼットは早くアンドレアスが帰ってきてくれるように願った。

 早く……そして無事で帰ってきて!

 エミールの回復と一緒に、リゼットは神に祈りたい気分だった。
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