皇帝陛下の花嫁公募
 でも、そんなことより彼に会いたくてたまらないの!

 何しろ別れの言葉さえ交わさなかった。起きたらもういなかったのだから。彼もこんなに遅くなるとは思わなかったのだろうが、あのとき一言でも何か声をかけてくれていたら、リゼットも中途半端な気持ちなままではなかったと思う。

 新婚生活が突然お預けになったんだもの……。

 早く会いたい。会っていろいろ話したい。彼の腕の中で温もりを感じたい。

 もっとも、自分勝手な気持ちばかり押しつけるわけにはいかない。アンドレアスはずっと隣国との攻防を続けていて、とても疲れているかもしれないからだ。

 まずは疲れを癒してもらって……。

 でも、国内の仕事も山積みになってしまっているかもしれないわ。

 アンドレアスはリゼットの夫というだけでなく、皇帝でもあるのだ。皇帝というのはこの帝国にたった一人。つまり、皇帝としての仕事が優先されるのは当たり前のことなのだ。

 王女として育ったリゼットは判り過ぎるほど判っている。

 それでも、早く会いたい。元気な顔を見たい。

 じりじりと彼の帰りを待っていたが、伝令がやってきた次の日の午後に軍が帝都に入ってきたという知らせを受けた。
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