皇帝陛下の花嫁公募
「わたしは看病していないわよ。看病をしたのはその子のお母さん。高熱を出しているのを見つけて、部屋に連れていったのは事実で、すごい形相で医者を呼びにいったのは確かだけど、脅かしてはいないわ。たぶん」

「そうだったのか……。衛兵や下働きの者達はみんな君のことを崇めていると聞いた」

「崇めるなんて……。ただ、いろいろあって、みんなとは知り合いになったの」

「知り合い? まさかと思うが、変装して……」

「さすがにそれはないわよ。あなたに恥をかかせるようなことは絶対しないわ」

 アンドレアスはテーブルの下でリゼットの膝に手を置いた。

「君のことで私が恥をかくことなんてないさ。君がどんな格好をしようと、そのままで素晴らしいんだから」

 彼の一言で、リゼットの胸の中が熱くなってきた。

「ありがとう……」

 彼はどんなときでもわたしを信じてくれる。

 それが何より嬉しかった。

「後で……いいえ、明日、ちゃんと話をするわ」

 彼が疲れているときに、彼の親戚の悪口なんか聞かせられない。第一、本当に公爵夫人とその息子が命を狙っているかどうかはまだ判らないのだ。

 ただ、やっぱり警戒するに越したことはないわ。何があってからでは遅いんだから。

 わたしだけじゃない。アンドレアスにも気をつけてもらわないといけないし。
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