皇帝陛下の花嫁公募
 ナディアが意識を取り戻したのは、翌朝のことだった。

 リゼットはずっと傍で付き添っていて、誰かが代わろうと言い出しても、頑として譲らなかった。

 ナディアはわたしとアンドレアスの身代わりになったようなものだもの。

 リゼットもあのワインが怪しいのではないかと思っていた。だから、自分が上手く言い訳をして、飲まずに済むようにすべきだったのだ。公衆の面前で堂々と毒殺をするはずがないと思い込んだものだから、ナディアをこんな目に遭わせてしまったのだ。

 実際、怪しいと思ったナディアのほうが正しかった。彼女に毒見をさせてしまったことに、リゼットは責任を感じていた。

 医者はナディアが飲んだ毒は少量だから回復する見込みはあると診断したが、これといって治療の方法もないようだった。

 テオはあらかじめ毒による何かが起こるかもしれないと思っていたらしく、毒消しの薬草を手に入れていた。それを煎じたものを持ってきてくれたが、意識のないナディアに飲ませるのは大変だった。

 呑み込んでくれなければどうしようもない。だが、奇跡的に呑み込んでくれた。リゼットは回復を信じて、夜の間、ベッドの傍の椅子で不安を抱えたまま過ごしたのだ。

 途中で眠ってしまい、ベッドに突っ伏していたリゼットだったが、ふと何か動く気配を感じて身体を起こした。すると、ナディアがゆっくりと目を開けた。

「ああ……ナディア!」

 リゼットが感極まって涙を流すと、ナディアは不思議そうな表情でこちらを見ていた。
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