皇帝陛下の花嫁公募

 ところが、廊下の角を曲がったところで、誰かとぶつかってしまった。最初はお互い、相手が誰だか判らなかった。

「大丈夫かっ?」

 リゼットは顔を見られないように帽子を目深にかぶっていたが、声だけで誰だか判った。

 アンドレアスじゃないの!

「……失礼しました」

 リゼットはもごもごと言い、持っていくように頼まれた包みで顔を隠しながら去っていこうとした。

「ちょっと待て! 君がどうしてこんなところに……!」

 つまり、やはりばれてしまったということだ。リゼットは本能的に逃げようとしたが、腕を掴まれ、帽子を外される。長い髪が流れるように落ちていった。

「リゼット! アマーナリアに帰ったんじゃなかったのか!」

「帰るわけないでしょ。あなたに危険が迫っているというのに」

「とにかく、今はどこかに隠れているんだ」

 腕を引っ張られて、手近な部屋に放り込まれようとしたそのとき、銃声と女性の悲鳴が聞こえてきた。

 あれは……ナディア!
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