皇帝陛下の花嫁公募

「テオ! テオ!」

 ナディアがテオを呼んでいる。その瞬間、あり得ないほどの力が出て、リゼットはアンドレアスを振り切って、そちらに向かった。

「ダメだ! リゼット、止まれ!」

 宮殿でどこにどんな部屋があるのかは熟知している。どんなふうに通路があるのかも。ちょうどここは迷路のように入り組んでいる場所で、リゼットは飛び込んだ。

 不意に、横から隠れていた誰かの手が伸びてきて、リゼットはその何者かに捕らわれてしまった。

「動くな」

 頭に銃が突きつけられている。

 リゼットは固まったように動けなくなってしまった。

「リゼット!」

 アンドレアスは正面からやってきて、凍りついたように足を止めた。そして、後ろからはバタバタと足音が聞こえてきた。

「リゼット様!」

 男が向きを少し変えたので、リゼットもそちらを少し見ることができた。十数名の衛兵達とナディアとテオがいた。状況は判らないが、スパイを見つけて捕らえようとしたところに発砲されて、逃げられたのだろう。

 それで、わたしがスパイに捕らえられて……。

 テオは腕を押さえていて、そこから血が流れていた。

「テオ……もしかして撃たれたの?」

 リゼットはそちらを向こうとしたが、更にぐいと銃を突きつけられる。

「動くなって言っただろう? ちょうどいい。皇妃様がまさかこんな格好で現れるとはな」

 アンドレアスは蒼白な顔になって、一歩踏み出した。

「彼女を放せ」
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