皇帝陛下の花嫁公募
「私は何も武器を持っていない。丸腰だ。ほら」

 彼は上着を脱ぎ捨てた。白いシャツが眩しく見える。

「皇帝以上の人質はいないはずだ。おまえの国の王はさぞかし喜ぶだろう。ここで失敗したことも許してくれ、褒美ももらえる。どうだ? なんなら、私の腕を縛ったっていい」

 アンドレアスは両手を挙げて、スパイとリゼットに近づいてくる。

 本気なの……?

 皇帝が人質になっていいわけがないじゃないの!

 皇妃なんて替えが効く存在でしかない。もちろんリゼットは一人しかいないが、この帝国にとっては皇帝が一番大事で、皇妃は二の次だ。

 こう言ってはなんだが、もしアンドレアスがここで命を落としたら、リゼットにはなんの価値もない。人質にもならないのだ。総攻撃されることだろう。もちろんリゼットは死ぬかもしれないが、そんなことは関係ないのだ。

「ダメよ……アンドレアス。馬鹿なことを言わないで……」

 リゼットの目からは涙が溢れ出てきた。

 彼の愛情があまりにも深くて……。

 どんなものよりリゼットが大事だって、彼の瞳がそう言っているの。

 彼の愛を確信した今だからこそ、リゼットは絶対この危機から脱すると決めた。自分も犠牲にはならないし、彼を連れていかせたりしない。まして、彼の命を奪わせたりしない。

 髪の毛一筋だって傷つけたら承知しないから!
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