皇帝陛下の花嫁公募

 女スパイは調子に乗って、衛兵達に縄を寄越せと言っている。それでアンドレアスを縛るつもりなのだ。

「冗談じゃないわよ! わたしのほうが人質に最適よ。ほら、こんなに小柄だし。アンドレアスは身体が大きすぎるわ。引きずって連れていくことを考えてよ」

 アンドレアスは顔をしかめた。

「リゼット、少し黙っていろ」

「王様がご褒美くれるかもなんて欲をかかないことね。あなた達はここから逃げられればそれでよしとしなきゃ。失敗したスパイには死あるのみ。きっと逆スパイだって疑いをかけられて、拷問されるのがおちよ。

 だいたいよく考えてみてよ。『皇帝を捕らえてきました』って言われて、信じる王様がいると思ってるの? 偽者だって思われるわ。あなた達、国に帰ったらどんな目に遭わせられることか……。それを考えたら、わたしを人質にして、さっさと国境を越えたらどうなのよ?」

「うるさい! おまえ、その口を閉じておかないと……」

「閉じておかないと、どうするの? わたしの頭を吹き飛ばす? まあまあ、それじゃ、あなた達、逃げるどころか捕らえられて極刑よ。ねえ、あなたの故郷はどんなところなの? ご両親は? ご兄弟は? 奥さんとかいるの?」

「……スパイになる人間には親も子もいない。故郷なんか……!」
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