皇帝陛下の花嫁公募
「わたしが悲鳴を上げたり、テオの名を呼ばなければ……」
「いいのよ。もう上手くいったんだから。それより、公爵夫人とスパイはやっぱり共謀していたの? でも、ゲオルグのことは?」
「それはまだ判らない。後で陛下に聞いて、俺達に教えてくれ」
テオの言葉に、リゼットは頷いた。
「それにしても、わたし達、ちょっとすごいじゃない? これからなんだってできそうよ。スパイの真似事も掃除婦も使い走りもいろいろやって……」
テオは少し笑って、溜息をついた。
「俺達は陛下にたぶん注意を受けることになる」
「えっ、そんなこと、わたしが許さないわ!」
「陛下は俺達がリゼット様を守ると思って、託したのに、危険に晒すような真似をしたから。……リゼット様、陛下に心から愛されているんだということを、心に留めておいてほしい。俺達を叱るのは、リゼット様を愛しているからだ」
テオに諭されて、リゼットは少し涙ぐみそうになった。
「うん……。判っているわ。彼がとても愛してくれてるってことは」
彼は自分の命も差し出そうとしていたのだ。そんなことは、誰にでもできることではない。
「それにしても、リゼット様の評判は今すごいことになっているぞ」
「どういうこと? あ、わたしが男の子の格好で、宮殿に忍び込んで使い走りなんかやっていたから?」