皇帝陛下の花嫁公募
「それもあるが、スパイをやっつけた方法にみんなが驚いている。人質になりながら、喋り倒して、猿轡を噛まされそうになった隙に、一発で殴り倒したなんて……」
「え、もう噂になってるの?」
「そりゃあ、すごい勢いで。衛兵達は元々、リゼット様を慕っていたが、あれを見たらみんなに喋りまくりたくなるさ。陛下がリゼット様の身代わりになろうとしたことも、もうみんなが知っていて、女官達の間でも大盛り上がりだ」
どうやら悪い意味での噂ではなかったようだ。おてんばな皇妃はどうかと思うが、受け入れられているならよかった。リゼットはほっと胸を撫で下ろした。
「でも、女官達も……?」
「女はロマンスが好きだからな」
元々、公爵夫人の権力があって、リゼットに味方できなかっただけなら、これで宮殿の中も変わっていくかもしれない。
「ともかく、これで一件落着となればいいですね」
ナディアが少し不安を滲ませて呟いた。
「そうね。でも、今から何があろうと、ひとつずつ解決していけばいいんだと思うわ」
ナディアの恋の行方がどうなっているのか知りたかったが、やはりリゼットが口を出すことではないのだろう。
本音ではものすごく知りたいけど。
ナディアが話してくれるまで我慢だわ。
リゼットも『アロイス』のことをずっと黙っていたのだから、同じことなのだ。
テオがあくびをしだしたので、ここで三人の集まりは解散することになった。