皇帝陛下の花嫁公募
 夜になった。

 夕食を済ませた後、女官の手を借りて寝支度をする。そして、そのまま寝るふりをしながら、女官が出ていって一人きりになったら夜着の上にガウンを羽織り、しっかりと紐で結んだ。

 アロイスがいつ来るか判らないから、窓はずっと開けたままだ。

 まだフクロウのような声は聞こえてこない。

 金色の長い髪は下ろしたままだ。本当は綺麗なドレス姿を見せたいと思ったが、夜では仕方ない。

 彼はいつ来てくれるのかしら……。

 そう思って、窓の傍まで行き、夜空を見上げたとき、リゼットの耳にようやくフクロウみたいな声が聞こえてきた。

 アロイスだわ……!

 リゼットはすぐに室内履きのままバルコニーへと出ていった。そして、手すりから下を見下ろす。

 月光に照らされた庭には確かにアロイスの姿があった。

 彼は屋敷をじっと見ていたが、やがてリゼットに気がついたようで、こちらに近づいてくる。

「アロイス……」

 リゼットは囁いたが、彼は唇に人差し指を立てた。

 喋るなってこと?
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