皇帝陛下の花嫁公募
「こんな格好でごめんなさい。あなたがいつ来るか判らなかったから……」

「いいんだ。これが君の普段の姿という気がする。何も飾っていないのに、こんなに美しいなんて……」

 アロイスはリゼットに近づき、髪にそっと触れてきた。

 まるでとても大事な宝物に触れるような優しい触れ方で、またもや胸がときめいてしまう。

「まさに黄金色……だな。他のどこにもない貴重な黄金だ」

「褒めすぎよ……」

「そんなことはない。この髪を隠すなんて、よくないことだ」

 彼は髪を一房手に取ると、恭しくキスをした。

 なんだか彼は物語に出てくる昔の騎士みたいだわ。姫のわたしに忠誠を誓って、守ってくれるの。

 リゼットはそんな妄想を頭に浮かべた。

「あの……座りましょう」
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