MちゃんとS上司の恋模様
「帰るぞ」
「え?」
「さっさと用意しろ!」
「はいっ!」
すっかり酔いもさめた私だが、今度はキスの熱にやられてしまっていた。
その上、私にキスをする須賀主任の熱っぽい視線を思い出し、私は心が震えている。
アルコールでの酔いではなく、キスの甘すぎる酔いでフワフワしている私は、須賀主任にエスコートされている。
悔しいことに、身体が甘く痺れている今、一人ではまともに動けそうにもなかったから正直助かる。だが、私は相変わらず強引な須賀主任になされるがままだ。
残念ながら、今の私には彼に反論する力もなければ、どうして私にキスをしたのか聞く勇気も持っていない。
須賀主任は私の腕を掴んだままホテルを飛び出し、ロータリーに横付けされていたタクシーに私を座らせた。
視線と視線が絡み合う。その瞬間、ドクンと大きく胸が高鳴ってしまう。
だが、そのあと発せられたひと言がいただけない。
思い悩んでいたのがバカバカしくなるほど、強烈なひと言を須賀主任は口にした。
「さっさと帰って寝ろ。このバカ女」
「な、なんですって!」
いつもの調子を取り戻した私は須賀主任に食ってかかったのだが、須賀主任は素知らぬふりをしてタクシーの運転手に「出してください」と言ったのだ。
もちろん、タクシーは私の意思に反して発車してしまった。まだ須賀主任に文句を言いたかったのに、勝ち逃げするつもりか!
慌てて振り返って須賀主任をキッと睨みつけようとしたのだが、すぐに力が抜けた。
須賀主任が私を見て優しくほほ笑んでいたからだ。
私はただ、呆然としながら小さくなっていく須賀主任を見つめ続けたのだった。