MちゃんとS上司の恋模様
「久美さん、私のこと気遣ってくださってありがとうございました」
「真琴ちゃん……」
ニッコリと笑って久美さんにもう一度お礼を言うと、やっと久美さんはホッとしたようで胸を撫で下ろしてくれたようだ。
だが、昨夜のことはまだ心配しているようで、久美さんはコッソリと小声で聞いてきた。
「須賀から聞いたけど、本当に大丈夫だったの?」
「うん、大丈夫でした。トイレに救われた……らしいです」
「は?」
昨夜須賀主任に話した内容を、そっくりそのまま久美さんに話すと、最初は目を丸くして驚いていたが、すぐに豪快に笑い出した。
「ははは! さすが潔癖王子ね」
「なんですか? それ」
「あら? 真琴ちゃん、聞いたことがない? 巷では藍沢は潔癖王子って呼ばれているのよ。そして悪名は尻軽王子なの。同期は皆知っているわ。本人は必死に隠そうとしているから、あまりアイツと接触のない人間は知らないんでしょうけどね」
そんな噂は初耳だった。だが、藍沢さんという人間がどんな人なのか。今回のことでよくわかった。
もう、須賀主任や久美さんに迷惑をかけないよう自分でもしっかりと気をつけなくてはいけないだろう。
だが、こんなふうな形で私に藍沢さんの性癖がバレたのだ。
さすがの藍沢さんも、迂闊に私に近づかないだろう。
これで万事解決。めでたし、めでたしだ。
久美さんと会議室で別れ、颯爽とした気持ちで経理部へと急いだのだった。