MちゃんとS上司の恋模様
あの一件以降、藍沢さんが私の周りをうろつくことはなくなった。
私が警戒しだしたというのも理由の一つだと思う。
それに、藍沢さんの悪事について、須賀主任と久美さんが気が付いたのかもしれないと彼自身が悟ったせいでもあるのだろう。
藍沢さん対策として須賀主任は私に残業をずっと命じていたが、それも今はなくなった。
須賀主任としても、藍沢さんの件はこれで落ち着くはずだと思ったからに違いない。
ただ、須賀主任は私を彼の補佐にしようと本気で考えているようで、相変わらず鍛えられている。
一応、“鍛えられている”という表現を使っておこう。
「なにくそー!」と怒りで震えるときもあるし、「鬼軍曹、絶対に闇討ちしてやる!」と復讐に燃えるときもあるが、以前よりは思うことも少なくなった。
それは表面上には決して出てこないが、須賀主任の優しさを感じたからなのかもしれない。
それに、こうして厳しいことを須賀主任が言い続けているのは、私の社会人としての仕事の姿勢を評価してくれているからだと思う。
と、なれば俄然張り切るしかない。
ただ、やっぱり須賀主任は厳しい。へこたれそうになると、心の内で暴言を吐いて明日への活力にしているのだ。
ああ、私って結構打たれ強いのかもしれない。
そう思ったとき、ふと頭を過ぎる。それは、自分がS上司の無茶ぶりを受け入れつつあるのではないかという危機感だ。
苛められても厳しいことを言われても、それに対する体勢が出来上がつつあるように感じてあ然とする。