MちゃんとS上司の恋模様
万が一、須賀主任が「わりぃ、考えもなくしちまった」なんて言った日には、どうしてくれよう。
だが、そんな日は永遠に訪れないだろう。
だって、私は聞くことができない。
「あのキスは私が好きだからしたんですか? それともノリですか?」などと聞く未来はやってこないからだ。
キスの理由を聞けるわけがない。恥ずかしいし、あまり下手なことを言うと自意識過剰だと言われかねない。
そんなことをツラツラと考えながら作業をしていると、私の悩みの九割方を占めているにっくき人物、須賀主任が声をかけてきた。
「なにボーッとしてるんだ?」
「い、いえ。ほら、キチンと仕事をしていましたよ?」
開いているファイルを指さして慌てて抗議したが、鬼軍曹の口元がクイッと上がる。
その表情は意地悪な男の代表格だと言っても過言ではないほど、須賀主任によく似合っている。
まさに“キング・オブ・S”の称号を授けてもいいぐらいだ。
戦々恐々としている私に、須賀主任はフフフと意味深に笑った。怖い、怖すぎる。
「そうかそうか、麦倉は俺の仕事を肩代わりしたい、と」
「い、いえ……誰もそんなことはひと言も」
絶対にヤバイ。これは身の危険を感じるフラグが立った……?
慌てふためく私に、ドS上司は通告してきた。