MちゃんとS上司の恋模様




 そうと決まれば、こうしてはいられない。
 とにかく課員がこのオフィスからいなくなる前に、書類を作成し直してFAXしてしまわなければならない。
 そして、一秒でも早くオフィスから飛び出して、須賀主任から逃げなくては。

 チラリと須賀主任に視線を向けると、誰かと電話中だった。
 どうか、このまま電話が長引きますように。ちょっとだけ意地悪なことを祈りつつ、私は再びパソコンの電源をつけた。

 かなりの集中力を見せて書類を作り上げているが、営業課のオフィスには私と須賀さん二人きりになっていた。
 今日に限って課員が定時で帰るだなんて……何かの陰謀か、鬼軍曹のなせる業なのか。

 焦ると数値を打ち間違えてしまう。しかし、不完全な書類を営業さんに送ったりしたら、迷惑をかけてしまうし、二度手間になってしまう。
 平常心、と心の中で唱えながら、なんとか仕事をこなす。

 すると、背後に誰かが立った。言わずもが、鬼軍曹こと須賀主任だった。
 私の近くにいる。それだけで、緊張のあまり身体が固まってしまう。

 心中は穏やかではない。だが、それを須賀主任にバレるのは癪だ。
 私は必死に冷静さを装う。すると、私の背後にいた須賀主任はディスプレイを覗き込んできた。

 あまりの近さに、思わず身体がピョコンと跳ねてしまう。

< 142 / 182 >

この作品をシェア

pagetop