MちゃんとS上司の恋模様




「麦倉、できたか?」

 いつもどおりの須賀主任だ。そのことに、少しだけ安堵する。
 しかし、どうしても意識してしまい、素っ気ない対応をしてしまう。

「まだです。須賀主任は、お先にどうぞ。きちんと電気は消して守衛さんにも伝えますので」

 PCの画面を見たまま、須賀主任に言う。
 どうしても須賀主任をまっすぐに見つめることができない。

 忙しそうにわざと装う私に「じゃあ、お先に」と言って、須賀主任はオフィスを離れていく。

 主任の気配が消え、ホッと胸を撫で下ろした。
昼間、あんな意味深なことを言っていたので、どうなるのかとドキドキしてしまったが、別段これといったことはなかった。
 この調子では帰りはいつになるのかわからないとでも思ったのだろうか。
 何もなかったことに安堵しつつも、どこかでガッカリしている自分がいる。

(いやいや、私ってば何をガッカリしているのよ!)

< 143 / 182 >

この作品をシェア

pagetop