MちゃんとS上司の恋模様
MちゃんとS上司の噂



「真琴ちゃん、仕事お疲れ様」
「藍沢……さん?」

 背筋に悪寒が走る。

 例のホテル連れ込み事件があってからというものの、藍沢さんが私に近づくことはなかった。
 須賀主任や久美さんも目を光らせてくれていたおかげというのも大きいが、私も藍沢さんと顔を合わさないよう、努力はしてきたからでもあるだろう。

 それなのに、何故……

 戸惑っている私を見て、藍沢さんはクスクスと楽しげに笑う。

「ここのところ君の上司と、多田さんからの監視がキツくてね。君を食事に誘うことがなかなかできなかったんだ」
「っ!」
「今度こそ、この前の仕切り直しをしたいと思っているんだ」
「し、仕切り直しだなんて。別に結構です」

 あんなことがあり、須賀主任たちをも敵に回したのだから、藍沢さんがこれ以上悪事をするとは思えなかった。それなのに、まだ諦めていなかったのか。
 勢いよく藍沢さんから離れ、私は自分の身体を抱きしめた。

 だが、藍沢さんはジリジリと私に近づいてくる。それを避けるため、後ずさりをして一定の距離を保つ。
 怯えきっている私を見て、藍沢さんはどこか不思議そうに笑う。

 どうして自分から離れていこうとしているのか、わからない。そんな様子の藍沢さんを見て危機感を募らせる。


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