MちゃんとS上司の恋模様
「お前が抱えている仕事はなくなった。ということで、手が空いた麦倉にはやってもらいたい仕事がある」
「資料のファイリングでしょうか?」
それこそ後輩にやってもらった方がいいように思う。
取引先会社の名前を覚えることができるし、何より仕事の流れなどもわかる。
以前にも私はファイリング作業をしたことがあるのだし、この仕事こそ後輩に譲るべきじゃないだろうか。
そう須賀主任に提案したが、それはすぐに却下された。
「ダメだ。この仕事は麦倉、お前にやってもらう」
「……」
須賀主任の意図が見えない。納得がいかない私は無表情で須賀主任を見つめる。
すると、彼はフッと頬の力を抜いて苦笑した。
「ようするに、だ。これは雑用ではない」
「は、はぁ……」
私が考えていることを読まれていた。その居心地の悪さに言葉を濁す。
再び視線を逸らすと、須賀主任はフゥと小さく息を吐いた。
「この数日、麦倉の仕事ぶりや、過去の査定評価などを見て判断した上での決断だ。お前には営業事務から一歩踏み込んだ仕事をしてもらう」
「一歩踏み込んだ、ですか?」
目を瞬かせている私に、須賀主任は深く頷く。