MちゃんとS上司の恋模様
「でも、最近この辺り物騒でしょう? ほら、社内報で回ってきたじゃない。不審者に注意って」
「でも、私を送ったあと、久美さんは一人で地下鉄の駅まで行かないといけないんですよ? それも危険です」
地下鉄の駅への道は繁華街で人通りも多い。一方、私が使っている在来線の駅への道は街灯も少なめで人通りも少ない。
久美さんが心配しているのは、そのこともあるのだろう。
だけど、久美さんには急いで帰っていただき、旦那様の看病をしてもらいたい。
そう説得するのだが、なかなか首を縦に振ってくれない。
さぁ、どうしょうか。頭を悩ませていると、横から須賀主任が会話に入ってきた。
「麦倉は俺が駅まで送るから大丈夫だ」
「それが心配だって言っているのよ!」
「何が心配だと言うんだ? 上司が部下の身を案じて駅まで送る。ごくごく普通のことじゃないか?」
「そうだけど、そうなんだけど!」
とにかくこれまでの須賀主任の態度や過程が気にくわないのだろう。
久美さんはまだ難色を示している。
このままの状況だと、久美さんは断固として私を駅まで送ろうとするはずだ。
でも、それじゃあ今度は久美さんのことが心配だし、何より早く帰って旦那様の看病をしていただきたい。
それにはもう、須賀主任の誘いに乗るしかほかないだろう。
私は小さく息を吐き出したあと、須賀主任を見つめた。