MちゃんとS上司の恋模様
まだ傘を差すほどではないが、あと数分もすれば本格的に降り出しそうだ。
コンビニでビニール傘を買おうかと考えていると、須賀主任に手首を掴まれた。
「走っていけばすぐだ。急ぐぞ」
「ちょ、ちょっと! 須賀主任!?」
突然の出来事で頭が追いつかない。それでも須賀主任は強引に私をひっぱり駅までの道を足早に歩いていく。
私は慌てながらも、主任に手首を引っ張られながら歩調を速くする。
足早に行けば五分の道のり。だが、駅に着く頃には息が上がってしまっていた。
ハァハァと呼吸を整えている私に、須賀主任は先ほどと同様に腰が砕けてしまいそうなほどセクシーな声で囁く。
「お前の手、キレイだよな」
「は?」
何を言い出した、この人は。
目を大きく見開き、須賀主任を見上げる。
私との身長差はかなりある。こうして見上げなければ、主任の表情を見ることは困難だ。
しかし、主任の顔を見たのは間違いだった。
ドクン、と大きく胸が高鳴り、鼓動が速くなる。それほど、切なくて情熱的な目に捕らわれた。
手を離してもらいたいのに何故か動けない。