MちゃんとS上司の恋模様



 そのことを他の女子社員に言ったとしても「うらやましい」なんて言い出すのがオチだろう。
 なんせ身体も捧げてしまいそうな勢いで、うっとりとしていたのだから。

 しかし、須賀主任の行為は間違いなくパワハラにセクハラだ。これはやっぱりとんでもない上司である。
 視線を鋭くして須賀主任をキッと睨みつけると、彼は開き直ってとんでもないことを言い出した。

「鑑賞物を愛でて何が悪い?」
「な!?」
「キレイな物に触れたい、という欲求は人間として当たり前だろう。そんなキレイな指を見せているお前が悪い」
「私!?」

 どうして私が悪いなんてことになるのだろう。
 怒り狂う私に、課長はクツクツと意地悪に笑った。

「とにかく、だ。そのキレイな指を他の男に触れさせるなよ?」
「は……?」

 あっけなく手を離され、口をぽっかりと開けてしまう。
 マヌケ面した私に、鬼軍曹はニッと口角を上げて意味深に笑った。

「当分の間、お前は残業だから。覚悟しろ」
「そ、そんなぁ!」

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