MちゃんとS上司の恋模様
「これはちょっとしたお礼だよ」
「そ、そんな! 仕事なんですから、お気遣いなくですよ」
そう言って藍沢さんにデスクの上にある小さな箱を返そうとしたのだが、彼は首を横に振った。
「それでも、僕は麦倉さんに助けられたんだから。お礼はさせてもらいたいな。少しで申し訳ないんだけどね」
でも、と渋る私に、藍沢さんはその小さな箱を私の手に握らせた。
「皆の分はないから、ほらササッと閉まって」
「えっと、え?」
強引に押しつけられて目を白黒させると、藍沢さんはフフッと軽やかに笑った。
「ここは笑顔で“ありがとう”でいいんだよ、麦倉さん」
「!」
「ね?」
そう言って小首を傾げる藍沢さんの可愛らしいこと。
私より年上の男性に可愛いなんて言ったら怒られてしまうかもしれないが、可愛いものは可愛いのだから仕方がない。
ドキドキする鼓動を抑えながら、私は感激しながらお礼を言った。
「あ、ありがとう……ございます!」
あんまり大きな声を出すと、周りの人間に見つかってしまう。
皆には内緒でと藍沢さんが言うので、私も小さな声でお礼を言った。