MちゃんとS上司の恋模様
「ねぇ、麦倉さん。ちょっと話したいことがあるんだけど……今、いいかな?」
「なんですか? 藍沢さん」
給湯室でお湯を沸かしていると、営業二課の王子様である藍沢さんがやってきた。
今、この狭い空間には二人きり。胸の鼓動は一気に高まりドクドクとうるさいほどだ。
藍沢さんに気付かれないように、そっと深呼吸をしてから彼を見つめる。
「麦倉さんっていつも社食で食べているのかな?」
「あ、はい。でも今日は同期が有休取って休んでいるので、どうしようかと思っていたんです」
いつもは大抵同期二人と社食で昼食をとっている。
お弁当を持ち込んだりもするが、社食の定食を食べることも多い。
だが、今日は二人とも別件で有給休暇を取っている。
一人だけで社食に行って食べるのも味気ないかもと思っていた。
それなら、コンビニでサンドウィッチでも買ってきて自分のデスクで食べようかなぁと考えていたのだが。
そのことを藍沢さんに伝えると、彼はとびっきりの笑顔を私に向けてきた。
眩しい。眩しすぎる。まばゆい光に包まれている藍沢さんを直視できない。
それもこれだけの至近距離でのスマイル炸裂。私じゃなくてもクラクラしてしまうことだろう。
藍沢さんは誰もいないのに、私の耳に近づいてきて小さく囁いた。