MちゃんとS上司の恋模様
「今日、一緒にランチでもどうかな?」
「え!?」
思わず目を丸くして、藍沢さんを見つめてしまった。
今、私の聞き間違いではなかったら、藍沢さんはランチを一緒になんて言わなかっただろうか。
夢の中の出来事だから正気に戻れ、と目を泳がせる私に藍沢さんは相変わらず爽やかすぎる笑みを浮かべた。
「実は、麦倉さんに折り入って相談したことがあるんだ。会社ではゆっくり相談もできないから昼食を取りながらなんてどうかなと思って」
「!」
とんでもないお誘いがやってきた。目を大きく見開いて彼を見つめてしまう。
まさか会社の王子様から、直接お誘いがあるなんて夢みたいなことが現実に起こっているというのか。
この状況になっても、私は疑ってしまう。
たぶん、夢だ。絶対に夢だ。
だって、相手は“あの”藍沢さんなのだから。真に受けていたら痛い目に合うかもしれない。
そう自分に言い聞かせながらも驚きで動きを止めた私に対し、藍沢さんは王子様らしい目映いほどの笑みを浮かべて小首を傾げた。
「どう? ダメかな?」
「!!」
どうやら夢じゃないらしい。これは現実のようだ。
ハッと我に返り、私は慌てて大きく何度も首を横に振る。