MちゃんとS上司の恋模様



 キラキラ笑顔でその小首傾げる仕草はハンパない威力だ。
 慌てながら藍沢さんにもう一度大きく頷いた。

「だ、だ、大丈夫です! 私なんかで藍沢さんの相談に乗れるか不安ですけど」
「本当!? ありがとう。じゃあ昼時間に入ったら駅前のロータリーで待ち合わせでいいかな?」
「ロータリーですか?」

 不思議に思って聞き返す。
 部屋は違えど同じビル内で仕事をしているのだ。どうして一緒に出て行かないのだろうか。

 ロビーで待ち合わせすればいいのに、と考えていると、藍沢さんは困ったようにほほ笑んだ。

「ごめんね、麦倉さん」
「え?」
「実は今から外で商談があるんだ。昼前には戻ってくるとは思うけど、駅で待ち合わせした方が早いかなぁと思って」
「あ、なるほど!」

 思わず心の中でポンと手を叩く。

 少しだけ藍沢さんを疑ってしまっていた。
 藍沢さんは社内でとても人気のある男性だ。となれば、彼の周りはいつも女性で溢れている。
 その女性たちに私といるところを目撃されてしまったら面倒なことになる。そう思っての発言じゃないかと思ったのだ。

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