MちゃんとS上司の恋模様
きっと藍沢さんは内緒にしておいてほしいということで、私の耳元で囁いていたといのに。
私が大声で返事をしてしまったら、それも無駄な努力となってしまう。
慌てて両手で口を押さえると、フフッと藍沢さんは軽やかに笑う。
そういう仕草や行動を見ると、やっぱり大人の男性だと思う。
給湯室から出て行く藍沢さんの背中を目で追い、ずっと給湯室の外を見続けた。
どれぐらい会社の天使に呆けていたことだろうか。
シュシュッというお湯が沸く音がして意識がようやく現実に戻り、慌てて火を切る。
高揚している気持ちをなんとか抑えようと努力はしてみるものの、なかなか落ち着かない。
だが、こんなところで一人顔を赤らめ、キャアキャアと声にならない叫び声を上げている暇はない。
「よぉし、いっちょ頑張りますか!」
午前中の仕事をしっかり終えないと、藍沢さんとランチどころの話ではなくなってしまう。
ポットにお湯を入れたあと、私は気持ちをお仕事モードに切り替えて給湯室を後にした。