MちゃんとS上司の恋模様




 * * * *


 待ちに待ったお昼休み。
 時計とにらめっこしつつ、針が早く十二を差してと何度願ったことか。

(よし! お昼休憩だ!)

 私は正午ピッタリに席を立ち、いそいそと社外に出る。
 すっかり季節は夏。オフィスビルから出ると、ムッとした湿気を感じつつ、日差しも強くて半端ない。

 日傘を持ってくればよかったかもしれない、とも思ったが、ロッカーに取りに行く時間はない。とにかく急ごう。

 ここから駅までは徒歩五分の距離だ。熱くて溶ける前に、早く待ち合わせの場所に行きたい。

 藍沢さんは外で商談し、昼前には終わると言っていたはずだ。
 もしかしたら、すでに藍沢さんはロータリーで待っていてくれている可能性だってある。
 私が待つ分にはいいが、藍沢さんを待たせたくはないので、とにかく急ぐ。

 いつも以上に足取りも軽いので、駅までの道のりはあっという間だった。

 ロータリーに着いて辺りを見回していると、「麦倉さん」と背後から声がする。
 この甘くて優しい男性の声。間違いない、藍沢さんだ。

 振り返ると、軽く手を挙げて走り寄ってくる藍沢さんが見える。
 私も小さく手を挙げて振る。だが、すぐに恥ずかしくなって手を下ろした。

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