MちゃんとS上司の恋模様
「さぁ、行こうか」
「はい!」
私が元気よく返事をすると、藍沢さんはクスッと笑った。その笑い方もステキすぎる。
思わず顔が熱くなってくる。きっと真っ赤になっているはずだ。
そのことに藍沢さんも気づいている。そう思うと、ますます恥ずかしさが高まってしまう。
私はすっかり人気アイドルと一緒に食事に行く、という夢のようなシチュエーションに浮き足だってしまっている。
足取りもフワフワしていて、どこかに飛んでいってしまいそうなほどだ。
駅のロータリーから徒歩3分ほどで、小さなビルにたどり着いた。
何店舗か入っている商業ビルのようだが、とてもこじんまりしている。
駅裏ということで、私はあまりこの辺りには来たことがなくてキョロキョロと辺りを見回してしまう。
そんな私に、藍沢さんはビルの一階店舗を指差した。
「ここだよ、麦倉さん」
オープンデッキもある、おしゃれな雰囲気のレストランだ。
「うわぁ、ステキなお店ですね。でも、フランス料理って」
藍沢さんに連れて来てもらったお店は、フランス料理店だった。
フランス料理というと、ちょっとお高いというか、時間をかけて食べるイメージがある。
昼休憩の間に料理が運ばれてくるかとか、お財布の心配までしてしまい、藍沢さんを見つめる。
すると、藍沢さんは私に安心させるようにニッコリとほほ笑んだ。