MちゃんとS上司の恋模様




「大丈夫。ここ、ランチをやっているんだよ」
「え?」
「お箸で食べるから肩肘張らずに楽しめるし、なによりミニコースだから短時間で食べることができるんだ」
「そうなんですね」
「それもリーズナブルだから、安心してね」

 と小声で言ったあと、「穴場だから内緒ね」とほほ笑まれた。

 はい、そりゃもう。天使さまに言われたのですから、誰にも話しません!
 だって、藍沢さんは穴場を私に教えてくれたということになる。
 それだけでテンションはグインと高くなる一方だ。

 藍沢さんに促されてお店に入る。結構賑わっていた。人気店のようだ。
 ウェイターに案内されて席に着くと、藍沢さんはメニューを広げてくれた。

「お昼のランチはメイン一品で、お肉か魚どちらかを選ぶのだけど……麦倉さんは、どちらがいい?」
「じゃあ、お魚で」

 注文を終えると、すぐにスープやサラダ、パンが運ばれてくる。
 確かにこれだけ早く提供されれば、お昼休憩の間に食べ終えることができそうだ。

 お箸でいただくフランス料理というコンセプトだけあって、肩肘張らずにお料理を楽しめる。
 半個室になっていて、ある程度のプライバシーは確保できて居心地がいい。

 味も申し分ないし、チラリとメニューを見たが、藍沢さんが言っていたとおりで値段もリーズナブルだ。
 さすがは藍沢さんだ。穴場だと言うだけのことはある。

 営業であちこちを飛び回っている藍沢さんは、こういったステキなお店をたくさん知っていることだろう。
 是非とも色々と教えてもらいたいものだ。

< 90 / 182 >

この作品をシェア

pagetop