不器用な彼女
「ほら、行くぞ」

歩き出した社長に置いていかれないように、詩織は後に続く。


連れてこられたのは社長の自宅からすぐだった。

“shot BAR 神楽”


「いらっしゃいませ〜!…あら!恭介!」

カウンター6席とテーブル席が4つの雰囲気ある店内。
声を掛けてきたのは綺麗な女性。和服美人。うなじが色っぽい。

「お久し振りね…近いのにあんまり来てくれないんだもの」

「ん、忙しくて」

「んもぅ!いつもそう言う!」

和服美人はカウンターに座った社長の手に真っ赤なマニュキアが似合う指を絡める。見ているだけでイヤラシイ感じがする。この和服美人が社長に好意を持ってると詩織でも分かる。

喜ぶも嫌がるもせず、社長は当たり前のようにスルリとその指から逃げた。
こんなシチュエーションに慣れている感じが何故か少しだけ面白くなかった。










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