不器用な彼女
「おー、恭介じゃないか?」

公園の出口で声を掛けられる。母方の祖父だ。

同じくらい年老いた犬の散歩中らしい。
ここから爺さんの自宅が近い。

「あ、爺さん…元気そうだな」

「お前は小汚いな」

「失礼だな」

「ちょっと寄って行かないか?」

家が近いせいもあってたまには顔をだしているが、今回は2ヶ月ぶりくらいだ。

「婆ちゃんは?」

「ん〜、家に帰ってくるのは無理そうかな。今施設を探してるところだ」

「リフォームするって言ってんのに」

「やっぱり必要か?」

「かなりね」

古い家の敷居につまずき右手首と右大腿骨を骨折しそのまま入院で車椅子生活となってしまった。

「来週中にはまた見舞いに行くって言っといて?」

「そんな顔を見せたら驚くから来なくていい」

そんな冷たい事を言われる。




「まあ座れ」

通されたのは自宅の隣にある医院だ。
祖父は医師だ。今はもう医院を畳んでしまったけど。

診察を拒否するも、祖父の勢いに負けて素直にスウェットを捲った。

「とにかく食事はちゃんと摂れ。タバコは辞めて酒は控える事だな。あとはちゃんと寝なさい」

「…何か凄い薬ない?」

「ない!」

病気ではなさそうだ。不摂生が原因の体調不良らしい。

丸イスから立ち上がる際、少しバランスを崩してデスクに手を突く。

「お前の方が年寄りだな」

「少しバランスを崩しただけだって」








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