二番目でいいなんて、本当は嘘。
メイク道具はなかったので、すっぴんのまま髪形だけを整えてリビングへ向かう。

社長は、グレーのTシャツに黒のスウェットという格好でキッチンに立っていた。
淡い日差しのなかで見る姿は、会社での凛とした姿とは違っていて、なんだかドキリとした。

すらりとした体躯はスーツのときと変わらない。
シャープな輪郭も、切れ長の涼しげな目もとも、桐生社長そのものだ。

けれど、仕事のときいつも上げてある前髪は、ラフに下ろしてある。
いつも書類やペンを持っている手には、代わりにフライパンと菜箸が握られている。
――なんだか、かわいい。

若きCEOといっても、30は超えていたはずだ。
けれどスーツをまとっていないと、こんなにも学生みたいな姿になるのだな。
私はなんだか新鮮な気持ちになった。
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