二番目でいいなんて、本当は嘘。
「こんにちはー」

引き戸を開けて中に入ると、フロントの前の炉端に、何人かの女性客が集まっていた。

この宿は部屋数が少ないうえに、温泉街の中では端のほうに位置している。
隠れ家的なスポットで、そこがまた魅力なのであるが、最近とくに人気が出ているらしい。

その要因となっているのが、3匹の看板猫の存在である。


「シズクちゃん、おとなしい!」
「ユキちゃん、モフモフしてる」
「レオちゃん、今日も美猫~」

お客さんの腕の中でゴロゴロと喉を鳴らしているのは、3匹の猫たち。
その中には、未央が東京から連れてきたシズクの姿もある。


フロントに女将の姿があったので、私はぺこりと頭を下げて挨拶をした。

「今日は3匹ともここにいるんですね」
「そうなの。とくにシズクちゃんは炉端が定番位置だから、お客さんも喜んでくれてるわ」
「あったかいところが好きですから、シズク」

お客さんにおとなしく抱かれているシズクは、自分の役目をよくわかっているのだろう。
とくに愛想を振りまいたりはしないが、写真撮影にもおとなしく付き合っている。
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