二番目でいいなんて、本当は嘘。
山形にはシズクも一緒に連れてきた。
住み慣れた家は離れたくないだろうけど、一匹だけにしておくわけにはいかなかったからだ。

けれど、寮では動物の飼育は禁止。
そこで、〝猫のいる温泉宿〟として密かなファンもいるこの宿に、しばらくのあいだ預かってもらうことにしたのだ。

「シズクちゃんさえよければ、もう少しうちにいてほしいわ」
「そうですね。お腹の子も産まれてくるし、もうしばらくお世話になりたいです」
「よろこんで」

私は、お客さんに撫でてもらっているシズクに小さく手を振ると、奥にある事務所に向かった。
< 211 / 250 >

この作品をシェア

pagetop