二番目でいいなんて、本当は嘘。
「お待たせしました、川谷です」

かしこまってそう答えると、電話の向こうでソフトで低い声が聞こえた。

「まだ仕事中でしたか?」
「いえ、もう終わりました」
「そうですか。あ、ちょっと、すみません……」

電話の向こうは、なんだかばたついているようだった。


しばらく会話が中断したあと、再び声が聞こえた。

「ディレクターから、急ぎの仕事を川谷さんに頼んだと聞いたので。まだ残っているかと心配になったんです。シズクに怒られる羽目になったら大変ですからね」

「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。こんなこともあろうかと思って、最近、自動餌やり器というのを買ったんです」

仕事を始めたら、帰宅の時間帯は不規則になるだろうと予想していた。
やはり買っておいて正解だった。
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